此觸れ達しあつて以来は、所謂売淫いは自から消減した様子であつたが、治外法権の居留地内で行はるゝ結果、我が官警は取締りの自由で無かつたので、彼等は単独行為に出で、巧に外国人を拉し去り、闇きに咲く花の本能を発揮し、異人屋敷の門頭、影暗き灯の辻に出没する女達の仲間には、自ら姉さん株のものがあつて、其背後を操る別当さん(馬丁)や、人夫の親分株のものと連絡を取り、部下幾十人にて女達を操縦し、彼等の世界は栄えあるものであつた。