今此語原とも見るべき文献を挙げると、左の如きものがある。
人皆之ヲ憎ムコト讐敵ノ如ク、罵詈シテ羅紗綿卜呼ブ。然レドモ其言ノ由テ起ル所以ヲ知ラズ。蓋シ下等水夫等ノ綿羊ダ擁臥シテ暖ヲ取レルニ擬シテ、之ヲ鄙シムモノカ。 (横浜沿革誌)
武州横浜にて西洋人の妾となれる女を異名して、らしやめんといふ。 (長崎市史、風俗編)
日本婦人にて西洋人の妾となれる女を卑しみていふ語。 (大日本百科辞典)
「哆囉」俗に「羅紗」云。織レ之に綿羊毛を用ふ。綿羊俗にらしやめんと云。洋人犬を堂に上し、又巳が閨房中にも臥せしむ。国人誤て洋夷は犬及綿羊を犯すと思い、其犬羊と同く処女の夷妾となるを卑め、雑夫仮名を附て羅紗めんと云初しが、遂に通称の如くになる。 (守貞漫稿第二十編娼家下)
異人の妾となりし女をさして、ラシヤメンと唱ふるなり。此名を負ひし元といふは、「異人彼国より連れ渡りしラシヤメンといふ獣あり。其性素直にして、よく人に馴れしたしむものなり。船中にてマドロスども、下宮下部を云う。煩惱きざしたるとき、此獣をとらへておかす事ありとぞ。此故に異人に犯さるゝの義よりして、ラシヤメンといひならいせしも理なり。 (横浜奇談)