チヨンキナ踊り

らしやめん女郎が遊興の座敷で、余興として戯れ興ずるチヨンキナ踊りは、時代相を浮べたらしやめん女郎を語る廓名物乃至、横浜情緒の尤なるものであつた。此踊りは三味線や太鼓に節を合せ、手拍子そろへて踊りながら拳を打ち、

チヨン抜けチヨン抜け、チヨンヽ抜けヽ、チヨンがよいさで、チヨチヨンがよいやさ。(原歌、チヨンキナヽ、チヨンヽキナヽ、チヨンがよいやさで、チヨチヨンがよいやさ。)

と、曲譜面白く抑揚もおかしく踊り狂ふのである。かくして拳に負けたものは、著衣を順次に一枚づつ脱ぎ去り、拳踊りの進むにつれて、果ては腰のもの一枚となり、遂には裸体となつて終ふのであるが、此雰囲気中に、外国人はらしやめん女郎を侍らせ、彼女等がする踊りに酒酌み交はしながら、歓喜の極みを盡し、勝者には弗の沢山を賞与するのであつた。