初めらしやめん女郎抱へ入れた際し、当時夷狄視した外国人に関係する事を前提としたらしやめん女郎に、好んで我から身を投ずるやうな女子は無論皆無であつた。対外関係上、幕府の要求も頻りであり、且つ横浜へ遊廓設置の一つの条件としてのらしやめん女郎でもあるので、廓としては此重責もありて、此抱へ入れには少なからぬ努力を払つたものである。厚顔無恥の宿場女郎を稼ぐ少数の女逹以外には、納得する女は無かつた。そこで各地の遊廓に人を派し、利を以て喰はすの手段を取つたりして、僅に要求に応じて居た。果ては遠く長崎地方に求めて多少異国味に馴れた遊女や、其他の女逹を抱へ入れんとしたとも云はれるが、結果は良好でなく、何れも要求数に満たぬ有様であつたから、 其方面の応募者を相当多く拉し来つたやうである。 彼等は横浜と云ふ土地の情況に多少とも理解を有するものが多かつた関係から、横浜界隈若くは武相二州の ものが多数を占めたと云ふ事である。